大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和24(れ)8 判決

主 文

本件上告を棄却する。

但し当審における未決勾留日数中六〇日を本刑に通算する。

理 由

弁護人塩尻太九郎の上告趣意第一点について。

刑法第二四〇条前段の強盗傷人罪はいわゆる結果犯であるから、強盗の共犯者の

一部の者が暴行したため傷害の結果を発生せしめた場合は強盗を共謀した者の全員

が強盗傷人罪の責任を免れないことは屡々当裁判所の判例とするところである。本

件について見れば、被告人Aは共犯者B、C、D等と共謀して他人を脅迫して金品

を強奪しようと企て、E方へ押入り強盗行為の実行中被告人以外の共犯者B等が右

Eに傷害の結果を発生せしめたのである。然らば被告人が右Eに対し直接傷害の結

果を発生せしめた者でなく又右傷害行為が所論のように突嗟の間に行はれ被告人と

してはそれを予想しなかつたことであつたとしても、被告人として本件強盗傷人罪

の責任を免れることができないのは明である。されば原判決が被告人を本件強盗傷

人の共同正犯に問擬して刑法第二四〇条前段同第六〇条を適用処断したのは正当で

あつて、所論のような違法はない。論旨は理由がない。

同第二点について。

原判決が判示第一事実の(二)及び(三)について被告人に酌量減軽をしていな

いことは所論の通りである。しかし犯罪の情状憫諒すべきものと認めるか否かは事

実審の自由裁量に委ねられたところである。被告人の犯した強盗傷人、強盗、竊盗

という他人の身体、自由、権利を侵した行為に対し、裁判所が法律の定める手続に

よつて適式に断罪科刑する以上たとい酌量減軽しなかつたとしても毫も違憲の問題

を生ずるものではない。所論は犯罪の動機を国の秕政に帰するようであるが動機は

刑責とは関係がないものであるばかりでなく、国政は国民の厳粛な信託によるもの

- 1 -

であつて、かりに国政が宜しきをえないとしても国政の是正は国民自ら憲法上認め

られた方法によつてなさるべきものであり、他人の基本的人権を侵し以て公共の福

祉を害する犯罪を正当化するものではない。論旨はすべて採用することができない。

よつて刑訴施行法第二条、旧刑訴法第四四六条に則り本件上告を棄却しなお刑法

第二一条により当審の未決勾留日数中六〇日を本刑に算入するものとし主文の通り

判決する。

右は裁判官全員の一致した意見である。

検察官 茂見義勝関与

昭和年二四年六月四日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 霜 山 精 一

裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!